beansgunのOverwatchメモ

ブロンズプレイヤーがAIM研究やオーバーウォッチリーグを楽しむブログ

Overwatch は「ゆっくり確実に」攻めると勝率落ちる?

OW大会でチームの個人配信を見るといろんなチームに共通してるのが「ゆっくり、ゆっくり」というコールです。最初のハラスで有効な打撃を与えられなかったり、6vs5で人数有利になったときによく見られます。

OWは「6人のうち誰かがミスしたら負け」と言われる事もあり「ゆっくり」の意味は

「味方の体力がやばいから、ゆっくり体制を立て直そう」
「人数有利だからリスク取らないでも勝てるので、スキル回復しつつゆっくり圧力かけていこう。むしろリスク取りに来た敵を刈りとろう。」
「相手のカウンターウルトに最大限注意して、セットアップしなおそう」

と複数の意味があるでしょう。
6vs5でミスしてカウンター食らうわけにはいかない。

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今季OWLでは、ファーストキル後の6vs5のチームファイト勝率は65-75%。しかしこれは機械的に算出された数字で、数秒以内にほぼ同時のファーストキル、実質5vs5な状況を除けば、観戦の体感として75-85%はあると思います。


ゆっくりすると相手もチョークポイントにこもり、あるいは分散され、相手もスキルや体力が立て直され、6人揃ってさらに先に仕掛けられてやられる事も多い。OWは「先に仕掛けたもの勝ち」でもある。体力がないときはゆっくりで正解ですが、人数有利で85%のハイリターンを得れる場面を、15%のリスク恐れてゆっくりローリスク・ローリターンに変えるのはチャンスロス。チョークポイントにこもられても6vs5なら固まって突っ込んで勝てる可能性は大きく、さらなる時間稼ぎや次のULTスノーボールへ繋がります。*1


人数有利の「ゆっくり」はもう少しコールの解像度を上げれて、ヒーラーなら

「(みんなの)体力やばい、STAY」
Dva回復するよGoGo。(単体なら回復しながらもっと前出れるよ)」

互いのロールやULT管理、インゲームリーダーは
「サージ注意」「包囲!包囲! (正面カウンターリスク避けつつ最大限殲滅)」
「シャター注意」「突貫!突貫! (正面をタンク先頭で固まって突っ込めば確実に落とせる)」
「電話ボックス上のマクリー浮いてるよ! (帰り道をタンクでふさげば敵本体に戻れずカバー受けれない優先度高い敵)」

などに分けれるでしょう。
「ミスをしないゆっくりプレイ」を重視してると、こういったリターンの高い「Go」サインが少なくなり、受け身になりがちで相手に先に仕掛けられてしまいます。

OWは、チョークポイント多いマップは防衛有利で、チョークポイント少ないマップではハイリスクを何度も仕掛けられる攻撃有利です。しかしチームが120%力を発揮するのはOverTime前のラストアタック。後がなくなって初めて6人全員ハイリスク取る意思が統一されるからです。攻撃にしろ防衛にしろ、ラストアタックで先に仕掛けれる方が強い。

OverTime でみんな120%の力を出すとしたら、ゆっくり確実にいくターンは攻防どちらもせいぜい70%程度の力しか出ていません。70%の力でミスしないよう確実に動いて受け身になる。Overwatchが時間制限なく、拠点の奪いあいじゃなければそれが効率いいでしょう。しかし、時間制限があり、拠点さえ取れば後のこと考えなくていいならOWの定石は

「先に全力で仕掛けたほうが勝つ」>>>「ミスをしなければ負けない」

という力関係になります。
受け身のほうがミスを誘発されやすいからです。

要は「毎回のあたりあいがOverTime」という意識が、去年の王者サンフランシスコであり、Goats時代のヴァンクーヴァー(Runnaway) 。常に仕掛けて受け身にならないため敵のミスが増えることで、結果的に自分たちのミスが減ります。

「ミスしないよう確実に」という考えは日本の政府、役所、大企業、学校などに蔓延する正確で安全な文化ですが、誰からも怒られないよう、最初から完璧を目指すため、動きは遅く後手後手となります。とりあえずやって後から謝れみたいなアメリシリコンバレーや中国では、先手先手で走りながらいい加減な仕事を後からどんどん修正していきます。

人の目を気にしすぎて怒られたくない日本人の文化、ミスをせず正確で完璧さを好む風潮がeスポーツにも及んでるとしたら、緊張する大会や、自分たちより格上の相手に受け身になって何もできず飲まれないよう「当たり合いは常にOverTime」「今が納期」「今が締め切り」という不完全さを怒らず、ミスを恐れず、自分達から何度でも仕掛けるチーム方針が必要でしょう。

OverTimeの時が真の実力なら、いかに毎回OverTimeとして動けるようにするか。自分たちのミスを減らす考えはどこまで追求しても自分たち6人にしか影響ないですが、相手のミスを誘う考えは12人に影響します。Overwatchは12人で戦うゲームです。

拠点ごとに1Map で4回のOverTime を経験するチームと、エコラウンドがなく、常に全力で仕掛けて1Map 16回も OverTime を経験するチームでは試合やスクリムの経験値が4倍も違ってきます。

ショックの強さの秘訣 | d3watch.gg (2019年 サンフランシスコ快進撃後の記事)


全力でミスするから修正も効きやすくなる。
意識は「ゆっくり」ではなく「OverTime」。
日本人的な安全でミスしないプレイを見直し、何度ミスしても先に仕掛け続け、6人全員で何度も前のめりに倒れて、何度も立ち上がる方が得れる経験値は大きいかもしれません。格上の相手にビビってやりたいこと何もできないときより、一矢報いるチャンス増えた方が成長につながります。

受け身のミスは敵の手のひらの上なので分析が難しいですが、仕掛けた上でのミスならリプレイ反省会で「じゃあ、いかに先に仕掛ける手順を踏むか?」「どうやったら先の先を取れるか?」「ここ相手も先手取ろうとしてるので、これをスカした"後の先"にするには?」「この包囲戦術の先手は?」「ここの5vs6不利な状況で先手取り返すには?」など、少しづつ前準備段階の戦術を深堀りしていくのもよいでしょう。
 

 

*1:復帰が遅いアサルトA、ハイブリッドAの防衛はしかたないか?