beansgunのOverwatchメモ

ブロンズプレイヤーがAIM研究やオーバーウォッチリーグを楽しむブログ

トッププロはライバル相手にも自分の戦術を公開する?

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Evolution2017(通称EVO、世界最大の格闘ゲームの大会) 優勝
2018カプコンプロツアー 年間ポイント1位
Eリーグ(アメリカで行われる世界トップ選手の招待制大会) 優勝
EVO2018 準優勝
NCR2019(アメリカで行われる世界大会) 優勝
Game Over(ドミニカで行われる世界大会) 優勝


ストV世界一を取った男、ときど選手の心構えが面白いです。

世界一のプロゲーマーがやっている 努力2.0

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その本が1月5日まで無料公開 

OWにも結構当てはまるのではないでしょうか?
特に興味あった項目を抜粋します。

9割の人が陥る「もったいない」の罠

いきなりパッチがあたるとき、ここまで練習したことをどう扱うか?
の話ですね。

普通は「これまでの戦法」+「パッチ差分の調整」で対応する人が多いらしいですが、高いレベルほど通用しないと考える。

「常にゼロベースで考えること」
もしも最初からその戦力(パッチ)なら、自然にゼロベースで考えたはず。

サンクコストの問題ですね。
これはあとの考え方につながっていきます。

計画は「破るが勝ち」
「今日の正解は今日だけのもの」

とにかく速くPDCAサイクルを回し、いろんな事を試しては調整する。
対戦相手も成長しているからこそ、練習したこのやり方で、この戦法でと、今日の正解を大会にではなく、今日の正解の次を大会に持ち込む必要があります。なぜか?


そしてここが特に共感できたのですが、

秘密主義か、オープン主義か

スランプに陥る前の僕も、自分が得たゲームの最新情報を人に教えることは、デメリットの方が大きいと思っていましたし、オンラインにこもって対戦会には行かない時期が長く続きました。

 でも今は、考えが完全に変わりました。共有することで、自分にも相手にもメリットがあり、結果的に「情報を共有していない集団」に対しては、はっきり有利になっていくのです。どんな天才も、たった一人で思いつけるアイデアの数には限りがあります。寄ってたかって皆で考えた方が、効率がいいことは明らかです。

「自分にもメリットがある」から教える

 僕とりゅうせい選手は大会本番では、互いに勝利を奪い合う関係です。
「自分が勝っていたのだから、相手の弱みは黙っていた方が得ではないか?」
「りゅうせい選手が親切な人だから、たまたま教え合うことになっているだけでは?」
と思う人がいるかもしれませんが、それは間違いです。

 まず、教えた時点で僕自身のトレーニングになっています。画面の中で発生している状況を説明する。これは理解をアウトプットする訓練そのものです。教える過程で言葉にできないこと、言葉にしづらかったことがあれば「ああ、ここがわかってなかったんだな」と気づきますし、説明の努力をする過程で「こういうことだったのか!」と気づくこともできます。

 そして、自分の理解を正しくりゅうせい選手に伝えることで、彼のプレイ内容は次の段階に進みます。進めばこちらはそれに対応しなければなりません。

 僕がりゅうせい選手にアドバイスをする一番の目的は「インプット→アウトプット→フィードバック」のサイクルを速く回すため、つまり自分のためなのです。りゅうせい選手にアドバイスをしなくても、彼のプレイはこれから進歩していくかもしれません。しかし、それを待っているよりも、こちらがその進歩に協力することで、「自分の」サイクルを速めることができるのです。

また、りゅうせい選手がこちらに教え返すのも、彼が親切なだけではありません。立場を逆にして考えればわかることですが、りゅうせい選手にとってもこちらのプレイ内容が進歩することに、同様の利があるわけです。結局、互いに教え合うことが、合理的な判断だということになるのです。


「自分の強さを言語化できる」というのがまた大事な点らしいです。
最初から才能あるプレイヤーは自分の強さが言語化できない所がわからないまま放置されて、その才能の土台以上に大きくなれず壁を超えれない。

でも、きちんと自分のわからない強さを言語化して他人にはっきり説明できると、さらに自分の土台を強化できる。


ときど選手は、日常の対戦会だけでなく、配信で初心者相手からの指摘や質問にもヒントを得て取り入れたりするようです。なんというかプログラム界隈におけるオープンソース的な考えですね。

日本のIT業界とかゲーム業界は元々閉鎖的で、自社の技術は秘密どころか部署間すら共有しないのが常識でしたが、アメリカはオープンソース文化とか、ゲームデベロッパーカンファレンスという技術を互いに共有しあって、お互いを高め合う文化がありました。

普通はライバル企業に真似されたり、別の部署に手柄取られてもメリットがないので技術共有などしないのですが、オープンソース文化からするとまったく合理的ではなく秘密主義こそデメリットとなる。それはPS2PS3時代にゲーム市場がいっきに北米へ逆転したり、GAFAが台頭したりで明らかでした。

昔、ナチュラル北海道がCAGに勝って優勝したあとナチュ北コーチだった韓国の元X6gamingコーチは感想戦の配信を行いました。これ、日本のチームだったらメリットないのでやらないんですよね。自分たちの得意なことも弱点も公開されるわけですから。でも韓国のコーチは公開して「意見をもらったり」「言語化すること」で感想戦からまた一つ強くなるわけです。

なので優勝時点のナチュ北を分析しても、公開しても、選手たちはそのままではなく、常にひとつ上を行く。ゆえに「今日の正解は今日だけのもの」
極論を言えば、前日まで情報共有したライバル同士の戦いは、大会中も成長し、試合中も成長した者が勝つことになる。

d3watch.gg
2019チャンピオンのサンフランシスコショックですが、他のチームはみんな手の内みせないよう80%でスクリムやるところ、常に100%全力でスクリムするのがサンフランシスコスタイルのようです。これも手の内見せようが「今日のスクリムより明日はもうひとつ強くなってるから分析しても無駄」それより全力のPDCAサイクルを突き詰めていくという考えかもしれません。


そうすると、対戦相手に特化した特別な戦術や対抗策まで公開していいのか?
という疑問が出てきますが

【実力の2つの要素】
・地力:相手や状況と関係ない「土台」の力
・駆け引き:相手や状況の中で発揮される「一過性」の力


一方、現在は大会の数が圧倒的に増えたことで、地力が成績として可視化されやすくなりました。試行回数が増えるほど、あるべき数字に落ち着く。いわゆる「大数の法則」が働くからです。

地力8割、駆け引き2割で戦う

特別なカウンター対策とか、1度大会で見られたらすぐ対策されてしまう、1回限りしか使えない戦術などは「相手やチームのクセを読んだ駆け引き」になります。大会が増えて全部配信で観られることによって、特別な戦術は効率が悪くなってるといいます。


OWLだとリーグ戦が長いので、毎回毎ラウンド特別な対策を練るというわけにはいきません。対戦相手限定で1ラウンド取るためにみんなでそれだけ必死に練習するのは効率が悪い。ただし、1度負けたら終わりのプレイオフや、この1戦でプレイオフ進出が決まるかどうかの大事な試合ならありでしょう。それは共有しなくてもいいかと。

地力というのは、チームでできないことを意識して出来るようにすること。チームで意識しないと出来ないことを、無意識でも出来るようにすること。その土台が大きいほどスーパープレイにつながる。無意識で出来る基本の土台をひたすら強化して引き出しを増やす。

ときど選手の考えでいくと「公開スクリム」「大会の感想戦」「チームごとに現メタにどう対応してるかの解説動画」などで日本のプロアマチーム同士のコミュニティが韓国のように情報共有していくほど強くなるかもしれません。 

 

スポーツにおける「黄金世代」の発生というのは、いろんなライバル同士が深くつながってて、お互いがお互いを超えることで、とんでもなく高めあう環境が発生するかどうかなんでしょう。韓国はまさにそんな状況。

韓国と比較すると、OWプレイ人口が10倍以上も違うのでフェアに思えないかも知れませんが、Evoの鉄拳チャンピオンでこういう記事があります。

withnews.jp

今年2月、強豪ひしめく格闘ゲームの世界大会で、無名のパキスタンの若者が「番狂わせ」の優勝を果たした。さらに業界を騒然とさせたのは優勝後に放った一言。「パキスタンには強い選手が、まだまだいる」。

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 ラホールのゲームセンターで、本人に発言の真意を聞いた。アルスランさんは「あまりの興奮で、自分が何を言ったか、はっきり覚えているわけではないのですが」と前置きした上で、「強いのは僕だけじゃない。僕を育て、競えてくれた仲間が、たくさんいるということを伝えたかったのです」と語った。

 

鉄拳といえば韓国か、日本、アメリカが思い浮かびますが
パキスタンはインド東にある中東よりの国。
人口は2億人でもインフラが完全ではなく、チャンピオンがホームとしてる最大規模のゲーセンでマシン10台のみ。


でもそのゲーセンは全員がチームとなって互いを高め合う場になってるわけです。ストVの選手達がマンションの一室に集まって対戦会や情報共有をやって、高速にPDCAを回すように。



ふつうの日本人は、空気を読む、相手を察する、ミスを(さら)してはいけない、恥の文化なので、欧米だったら褒められる動画も、叩かれたり、余計なお世話とか言われたり、この程度共有するまでもないと自分の普通や理想が高すぎてモチベーション上がらず、情報共有そのものがヘタクソなのも日本らしさ。

1人で何十年もかけて道を極める場合にはそういった日本らしい文化のほうが、外から情報はいらずガラパゴス的な独自進化や突然変異が発生するメリットがあったりもします。

とはいえ2ヶ月に1回パッチが入るようなゲームで10年下積みする、少ない大会や手の内見せないスクリムだけでPDCAを回すなんて悠長な事いってられないので、ときど選手のように上手いこと発想や哲学を変えていくのもありかもしれませんね。


ストVのように、日本の上位20チームをひとつのゲーセンにいるかのように全部つなげてしまうような方法があれば、、、互いの強さや練習方法、チームマネジメントまで吸収し高め合う「黄金世代」を作る場や管理者ができればと思うんですけどね。



ときど選手の記事は「言語化して説明できて土台が強くなる」以外の強さもいろいろ書いてて面白かったです。